令和3年5月14日 厚生労働省より賃金構造基本統計調査結果が公表されました。

賃金構造基本統計調査では、労働者の雇用形態、年齢、性別などの属性と賃金の関係を明らかにする目的に鑑みて、調査月に18日以上勤務しているなどの要件を満たした労働者のみを集計の対象としているそうです。

また、新型コロナウイルス感染症の影響により、例年と比べて要件を満たす労働者の割合が減少しており、公表値もその影響を受けている可能性がありますため、結果の活用にあたってはご留意くださいという補足説明(注意書き)が記載されていましたことをご了承ください。

調査したのは2020年6月分の給料だそうで、調査の対象となる給与額等は下記の条件で調査・集計をしていると説明してありました。

■調査対象の給与額等の条件

■労働契約、労働協約あるいは事業所の就業規則などによってあらかじめ定められている支給条件、算定方法によって6月分として支給された現金給与額をいう。手取り額でなく、所得税、社会保険料などを控除する前の額である。
 
■現金給与額には、基本給、職務手当、精皆勤手当、通勤手当、家族手当などが含まれるほか、超過労働給与額も含まれる。1か月を超え、3か月以内の期間で算定される給与についても、6月に支給されたものは含まれ、遅払いなどで支払いが遅れても、6月分となっているものは含まれる。給与改訂に伴う5月分以前の追給額は含まれない。

■現金給与のみであり、現物給与は含んでいない。

■また、手取り額でなく、所得税、社会保険料などを控除する前の額(総支給額)を調査対象にしています。

■本概況に用いている「賃金」は、6月分の所定内給与額をいう。
 「所定内給与額」とは、労働契約等であらかじめ定められている支給条件、算定方法により6月分として支給された現金給与額(きまって支給する現金給与額)のうち、超過労働給与額(①時間外勤務手当、②深夜勤務手当、③休日出勤手当、④宿日直手当、⑤交替手当として支給される給与をいう。)を差し引いた額で、所得税等を控除する前の額をいう

集計をする上での在留資格の区分

在留資格の区分

 項目の集計をしていく上の在留資格区分は上記の通りになっているそうです。注意すべきは「専門的・技術的分野」の集計ですね。

特定技能や技能実習という在留資格は、表を見ても分かる通り「単独の在留資格」を集計していますが、専門的・技術的分野で集計されている在留資格は、16種類の在留資格の混在となっていますので、金額の分布幅が大きくなります事をご承知の上で以下表示します在留資格別の平均的給料額(月給:一か月あたりの給料額)を読み込んでください。

専門的・技術的分野の平均的な月給額

専門的・技術的分野の平均的な月給額

専門的・技術的分野の平均的な月給額は金額のバラつき・分布幅が広いですね。その理由は前述したとおり、集計する在留資格の種類が多いからです。

高度専門職のビザの人は年収1,000万円を貰う高スキル・高能力を有する人もいますし、日本人の一般的サラリーマンと同じ業務をする平均的な収入の技人国ビザ(技術・人文知識・国際業務)の方もいます。また、興行ビザとしてエンターテイメントを仕事としている外国人の給料(ギャラ)も有名で人気者の外国人タレントであればギャラは高くなりますが、ショーパブなどでダンスを披露してくれる外国人やホテルなどでBGMとしてバンド演奏してくれる外国人の給料(ギャラは)同じ興行というビザを有している者同士でも大きな格差が出るでしょう。また、国際弁護士や国際税理士など超専門的な知識と業務を請け負う法律・会計業務のビザを有する外国人は必然と給料は高くなります。

上記のように、集計される在留資格の種類が多いので金額分布が広くなりますが、それでも、専門的・技術的分野の在留資格を有する外国人労働者の平均月給額の人数が多い区分は 月給で20万円~26万円という区分に集約されています。

20万円~21.9万円未満が 10,860人
22万円~23.9万円未満が 8,770人
24万円~25.9万円未満が 11,050人

この集計結果が絶対的な結果ではないですが、経営者の皆さんが専門的・技術的分野の外国人労働者を雇用しようと思ったら、その外国人の月の給料は月給25万円前後の給料設定を検討する必要があるという事です。

特定技能の平均的な月給額

特定技能の平均的な月給額

特定技能というビザ(在留資格)は2019年の入管法改正によって新設された在留資格で、この特定技能ビザが新設される前までは、基本原則として「外国人労働者の単純労働」・「外国人を労働力の需給調整の手段して利用」することは禁止されていました。

しかし、昨今の日本における深刻化した労働力不足を背景に、人手不足が深刻化している特定の14の産業分野において「人手不足の解消・労働力の確保」を主たる目的として新たに作られた在留資格(ビザ)が特定技能です。

特定技能ビザの申請上の給料設定額は「日本人と同等以上の給料を支給する事」が条件となっています。ただ、年齢や経験、日本語理解力などの諸条件から「同年齢又は同じくらいの経験を有する日本人社員と同程度の給料設定をする」というのは、雇用する企業にとっても厳しいのがグラフからもうかがえます。

よって、特定技能ビザの外国人労働者がもらっている給料額の一番人数が多い区分が14万円~15.9万円となっており、その他の区分も考慮したとしても月給20万円以下での給料設定が多いようです。

この集計結果が絶対的な結果ではないですが、経営者の皆さんが特定技能の外国人労働者を雇用しようと思ったら、その外国人の月の給料は月給16~18万円前後の給料設定が妥当な金額でしょう。

ただし、実際は特定技能でも産業によって格差はあります。また、技能実習より即戦力として働いてもらえる人財になりますので、多くの求人情報を拝見していると月給で18~19万円ぐらいの設定が多いように思えます。

技能実習の平均的な月給額

特定技能の平均的な月給額

技能実習は国際貢献を目的として在留資格で、日本の技術を発展途上国へ技術移転をしていく為に、外国から労働者を呼び企業内で技術を教えて習得させて、その習得した技術を母国に持って帰ってもらい母国でその技術を使って産業を発展させることを基本理念にしている在留資格です。

よって、昔から「素人に仕事を教えてあげるのだから、給料は安く設定」というイメージが根付いているのが事実です。それが、顕著にグラフにも出ているようです。

月給区分を見ると他の区分とは大きく差を広げてダントツに人数が多い給料区分が 14万円~15.9万円の区分です。たぶんですが、この給料設定ですと最低賃金でしょう。

特定技能と比較すると技能実習の月給と特定技能の月給で一番人数が多い区分は同じ区分です。ただ、特定技能の場合はその二つ上の区分まで含めた給料額が月の設定額の検討範囲と読み取れますが、技能実習の場合は設定の幅が狭くて14万円~17.9万円の区分が給料設定の検討幅となり月給20万円をもらえる技能実習生は少ないという結果になっています。

ただ、興味が持てるのは、月給で60万円~69.9万円の区分にもほんの少しだけですが人数がいるという点です。技能実習で月60万円以上の給料を貰える事はほぼ無いですが、それでも、ほんの少し、限られた人は高給を得ているというのも事実です。

上記のグラフ以外の生の情報として

上記のグラフでの「給与額」は前述していますとおり、超過労働給与額を含まない金額です。実際は、この金額に残業手当が多少つきます。そして、外国人労働者はこの残業手当がとても大好きなんです:笑

だって、外国人労働者は「日本にお金を稼ぎに来ている」訳ですから、沢山働いて、沢山の給料を貰いたいんですよね。

大都市圏と地方では最低賃金額も違うし一般的な給与設定基準値も大都市圏と地方では格差がありますから、絶対値として説明はできませんが、多くの外国人労働者の希望給料額を聞いていくと、残業手当で2~4万円ぐらいは貰えると嬉しいようです。

ですので、
・技術人文知識国際業務の在留資格を有する外国人労働者の給料設定は
  基本給+住宅手当等の一般手当の合計で20~23万円
  残業手当で2~4万円
    計総支給額で 22万円~27万円が外国人労働者の月給設定検討額

・特定技能の在留資格を有する外国人労働者の給料設定は
  基本給+住宅手当等の一般手当の合計で18~19万円
  残業手当で2~4万円
    計総支給額で 20万円~23万円が外国人労働者の月給設定検討額

・技能実習の在留資格を有する外国人労働者の給料設定は
  基本給+住宅手当等の一般手当の合計で14~15万円
  残業手当で2~4万円
    計総支給額で 16万円~19万円が外国人労働者の月給設定検討額

これらが、外国人労働者を雇用する場合の給料を検討する基礎金額とお考えいただければいいかと思います。

今回の集計における平均賃金額等

最後に、今回の調査結果(令和3年5月14日 厚生労働省より公表 2020年6月分賃金構造基本統計調査)の在留区分別の総平均給料等は以下のようになっているそうです。

■専門的・技術的分野
  平均月給 302.2千円
  調査サンプルの平均年齢 31.8歳
  調査サンプルの平均勤続年数 2.9年

■特定技能
  平均月給 174.6千円
  調査サンプルの平均年齢 28.1歳
  調査サンプルの平均勤続年数 1.1年

■技能実習
  平均月給 161.7千円
  調査サンプルの平均年齢 27.1歳
  調査サンプルの平均勤続年数 1.7年


あくまでも今回の調査での平均値です。前述してある通り集計した厚生労働省も、新型コロナウイルス感染症の影響により、例年と比べて要件を満たす労働者の割合が減少しており、公表値もその影響を受けている可能性がありますため、結果の活用にあたってはご留意くださいという補足説明(注意書き)が記載されていました。

この数値・月給額を検討の基礎情報として、あなたの企業で実際に雇用する外国人労働者と面接をして日本語能力や仕事へのモチベーションや性格などを直に確認し、自社に合った給料のルールで外国人労働者の給料を設定してください。

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