前回、外国人労働者の雇用に関しては、大きく分けて二つの人材確保戦略があるとお伝えしました。「人財戦略型の採用」と「人的資源調達型の採用」です。

このうち、外国人労働者の人的資源調達型採用における注意点をご紹介していきたいと思います。

外国人の単純労働の禁止

日本において外国人労働者雇用に関しては、入管法により外国人の単純労働が原則禁止とされているのが現状で、特定技能ビザの新設によって単純労働が許可はされましたが、「人的資源調達型の採用」の場合は単純労働や安い人的資源の確保の為だけの採用には非常に注意が必要です。

そもそも、単純労働とは学歴や特定の技術、経験が無くても行える比較的簡単に誰でもが出来る仕事の事です。例えば、流れ作業や単に繰り返し行うだけの作業や一日中同じ動作をする作業などです。

なぜ、外国人の単純労働が禁止されているのかは法律等で明記されている訳ではなく、
①日本の治安が悪化してしまう懸念があるから
②日本人の仕事を奪ってしまう可能性があるから
という暗黙の理由により外国人の単純労働を禁止しているのです。

この理由って、ちょっと「差別的な要素」が含まれている感じがしますよね。確かに、ある意味、学歴はその人の親の収入額にある程度比例すると言われています。日本人でも外国人でも同じですが、高学歴の学歴を持つにはその高学歴の学校に行けるだけのお金を払える生活環境が必要です。大学・大学院・外国の大学への留学など、本人というよりその家族(親)の収入が多くなければ塾や学費など子供に教育費を掛ける事が出来ません。

このような事から派生して、貧乏な家の子供は知性が低くて品性下劣・お金持ちの子供は知性があり品行方向というようなイメージなのでしょう。よって、

”学歴の無い外国人=知性が低くて品性下劣=だから単純労働の仕事に就労=単純労働する外国人は野蛮な外国人=野蛮な外国人が多く入国すると治安が悪くなる”

という 勝手な連想イメージが生まれているではないでしょうか。とても差別・偏見的な思考です。

また、確かに日本人にも単純労働が性に合っているという人もいれば、性格や仕事に対するモチベーションの違いから単純労働しかできない人たちもいるのは事実です。よって、外国人が単純労働をしてしまうと、日本人のそのような人たちの仕事を外国人が奪ってしまう事になり、日本人の仕事が無くなってしまう発想なのでしょう。

このような理由から外国人の単純労働は禁止されていますので、「人的資源調達型の採用」をする場合は外国人にどのような仕事を担当させるのかの注意が必要になります。

*特定技能というビザの新設により、外国人の単純労働も可能になりました。特定技能ビザについての説明は後日ご紹介いたします。

外国人を安い賃金で雇うという考えは古い

昔からのイメージなのでしょうか。今の世の中でも「外国人は安い賃金の労働力だ」と考えている経営者や製造現場管理者がいるのは事実です。多分、日本語から連想されるイメージなのでしょう。

外国人労働者というと、「技能実習」が一番に思い浮かぶ人が多いと思います。この「技能実習」という言葉と日本における仕事上の習慣とがリンクしてしまった事による弊害です。

日本語において「実習生」「実習中」という言葉からイメージされるのは、
・新人、初心者
・仕事に慣れていない
・経験が無い、少ない
という事を想像しますよね。車の教習場での実習や教育実習、医者の実習生などなどです。そして、「初心者・仕事に慣れていない・経験が無い」という事は「仕事の能力が低い」と連想されて、仕事の能力が低いという事は給料が安くて当たり前】という事に連想されます。

よって、 ” 外国人労働者=実習生=安い給料 ” という連想が必然的に浮かんできてしまうのです。この連想は間違っているのですが、この間違った連想が頭に染みついている経営者や管理者は「外国人労働者は安い賃金で雇うものなんだ」となります。

しかし、日本の法律では、外国人労働者を雇用する場合は、【日本人と同等の給料を支払う事】と明記されています。よって、「外国人労働者は安い賃金で雇うものなんだ」という古い思考のままで外国人労働者を雇用しようとすると、後々、大きな問題が出てくる事になります。

外国人を雇った事による後悔

外国人を雇用した後、「あぁ~~ 雇わなければ良かったなぁ~~」と後悔する経営者の方もいます。その経営者から聞かれる「外国人労働者への不満」は
 ・日本語が通じないので仕事がはかどらない
 ・いくら説明しても覚えない
 ・文句ばかり言う
 ・説明や面倒を見るという作業が増えて、結局、今まで以上に忙しくなった
 ・外国人を雇った事によって、余計に人手不足になった
 ・途中で逃げてしまった 
   etc etc
色々と出てきます。

でも、この不満は「外国人だから」なのでしょうか? そんなことは無いでしょう。日本人を雇ったとしても同じような問題・不満は出てきます。

そもそも、人材採用に対してこのような不満が出てくるというのは、根本的に元々、その企業・職場において「人を育てていく」という習慣や企業風土が無かったり希薄だったからです。

今までは日本人を採用していたので、日本語で会話が出来ていたからこのような問題が表面化していなかっただけで、外国人を雇用することによってこのような人材育成における経営課題や業務フロー・作業フローの問題点が浮き彫りになっただけです。

従業員が就職した会社で頑張って働くのは、お金を稼がなければなならいという欲求があるのは事実ですが、人は、金銭的な欲求を満たす為だけでは満足できない生き物です。

心理学者のマズローは人の欲求は段階的に変わっていくと言いました。これがマズローの欲求5段階説です。

マズローの欲求5段階説

マズローの欲求5段階説の詳細は割愛しますが、人は、お金という生理的欲求が満たされてくると、仲間として集団に帰属する安心感を望むようになります(社会的欲求)。そして、良い仕事がしたい・それによって認められたいという欲求が出てきます(自我の欲求)

これは日本人労働者でも外国人労働者でも同じです。

会社に対する忠誠心・ロイヤリティ・仕事に対するやる氣・やりがいという想いは高次の欲求の産物です。労働者にこれらの想いを持って仕事をしてもらえるかどうかは、企業として「人的資源に対する考え方」が大きく影響を与えます。

外国人労働者を
・単純な仕事しかできない
・覚えが悪い
・給料は安くてもいいだろう
・こき使ってやろう
・日本語が理解できないから適当に嘘を言ってごまかしてやろう
なんて思って仕事をさせていれば、外国人労働者の雇用される満足度は高まりません。よって、高次の欲求を満たそうという階段を上っていきません。

また、生理的欲求や安全の欲求、社会的欲求をおびやかされると危機感を感じたり、この欲求を得る事が出来ないと感じたら、会社や仕事に対しての忠誠心は絶対に出てこないでしょう。本来、外国人労働者は「日本でお金が稼ぎたい」という強い生理的欲求を持って、遠い国からわざわざ日本にやってきています。残業も沢山したい! 休みが少なくてもいい!と思っています。 なぜなら、「 お金が稼げるなら、我慢するし、頑張る!」というハングリー精神を持っているからです。

仕事のやる気は満々なのに、「外国人労働者は使えない」と感じてしまう状況が起きている時は、経営者として「人を育てる経営」をしていないという証拠だと認識しましょう。

スポーツでも同じです。監督が悪ければ選手は自己の能力を発揮することができません。選手がいいパフォーマンスを出せていないのは、監督の責任です。経営も全く同じでしょう。外国人労働者を責める前に、経営者自身の経営手腕の無さを認識する必要があるかもしれませんね。

外国人労働者の人的資源調達型採用における注意点のまとめ

「人的資源調達型の採用」をする場合の外国人労働者の注意点をまとめておきます。

①単純労働は違法です。外国人が働ける内容に合った仕事を任せましょう
②日本人と同等、または、同等以上の給料を払う認識を持ちましょう
③外国人労働者がうまく仕事が出来ないのは、経営者の指導やコミュニケーションの取り方が悪いからと認識しましょう

>>>次回 ”卸売業における外国人雇用の傾向”についてご紹介いたします。

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